2009年10月アーカイブ

タイムトラベルという現実ではありえない設定を、まったくいかしきれていないのが残念だ。伏線もオチもない。主人公のおっさんは、自分ではコントロールできない不都合な出来事にただ苦悩するだけ。お相手の女性にとってはさらに不条理な人生を強要することになる。
同じ脚本家の「ゴースト ニューヨークの幻」をやりたかったんだというのはよくわかる。あのころは切ない物語とデミ・ムーアのかわいらしさに共感したものの、今や女は待っているだけの時代ではない。
ここまでうらやましくないタイムトラベルも珍しい。



映画を見終わっても「私の中のあなた」というタイトルの意味が分からなかった。原作となった小説とこの映画では結末が異なることを後で知り、その意味を理解した。結末を変えたおかげで、たしかにアメリカ的ハートフルな物語に仕上がった。と同時に心に残らない難病映画となってしまった。
子役はとてもいい。
注目を集めるアビゲイル・ブレズリンだけでなく、白血病をわずらいながらも短い恋に身を焦がす姉が生き生きとしている。
心を持ってしまった人形を韓国のペ・ドゥナが演じている。不自然に整いすぎた男性のための肉体とはうらはらに、少女のようにあどけないしぐさと世間知らずの透明感、これを表現できそうな日本女性がおもい浮かばないのは残念だ。メイド姿のかわいらしさに加え、日本語のたどたどしさが最大限に生かされている。
理想の愛玩物が実体化すれば男性が手放しで喜ぶかと思えばそうでもなく、現実はゴメンだという男性もいる。恋の楽しさとせつなさで甘酸っぱくなる前半から、後半は生きる辛さと美しさのようなものが一気に押し寄せた。年初に見たアメリカのほのぼの映画「ラースとその彼女」に似たテーマでありながら、日本独特の残酷さに引き込まれる。
原作漫画の業田良家は、「自虐の詩」の作者だ。

私もあるとき、誰かのための風だったかもしれない。